ASCOは、癌の臨床試験における水準引き上げと患者にとってより有意義な成果の獲得を研究者および製薬産業に要請

連絡先:
Kirsten Goldberg
(571) 483-1548
kirsten.goldberg@asco.org

本日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)は癌研究者、臨床試験依頼者、および製薬会社に対し、癌患者の生存の有意な延長を目的とした臨床試験デザインを使用するよう要請した。

本日発行されたJournal of Clinical Oncology誌の特別記事の中で、ASCOは癌臨床試験において研究者が目指し、また患者が期待を寄せる目標である全生存期間についてのアウトラインを、数種類の癌をモデルにて発表した。ASCO癌研究委員会 (ASCO Cancer Research Committee)が他の専門家や癌患者アドボケートと共に作成した提案には、進行性膵癌、肺癌、乳癌、大腸癌の計4種類の癌について「臨床的に有意義なアウトカム」が例示されている。

「われわれは各機関に対し、可能であれば生存期間を著しくかつ臨床的に有意義なレベルまで改善させることになる臨床試験の実施を要請しております」と語るのは、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)の一員でASCO癌研究委員会前委員長、そして同記事の筆頭著者のLee M. Ellis医師である。「特定のドライバー分子を標的とした新しい治療法のおかげで、癌患者の寿命は延びています。癌のドライバー分子に対する知見は深まっているので、よりよい成果を得られる臨床試験デザインは可能なはずです」。

著者らは、「水準の引き上げ」に伴うさらなる利点は、少ない患者利益のために行う大規模試験よりも迅速に実施できるsmaller and smarter (小規模で懸命)な臨床試験のデザインが可能であることを挙げている。

「こうした要求の高い臨床試験の目標のためには、患者転帰を有意に改善する基礎となる、確実かつ信頼性のある前臨床試験をベースにする必要があります」とEllis医師は語った。「提案では、われわれはQOL(生活の質)の重要性と、毒性の問題についても言及しています。患者が(新しい治療から) 受ける毒性が現在の治療よりも高ければ、その治療はより大きな恩恵を与えるものでなければなりません」。

またASCOは、研究者が標本と治療転帰との関連性を知ることで、どの患者が治療による利益を得る可能性が高いかについて、よい判断が行えるよう患者にインフォームドコンセントを行った上で臨床試験依頼者が包括的な生体標本バンクを試験ごとに設置するよう提案している。患者転帰に関する情報へアクセスすることで、研究者が試験の完了前後で学術的な質問を行うことができる。そうした段階では、治療計画の決定に役立つバイオマーカー、つまり体内の異常の有無を示す指標となる体内の分子マーカーの発見や妥当性の評価がより可能となる。

ASCOの提案作成にあたっては、意見調査プロセスやASCO理事会 による審査を行った。ASCO癌研究委員会は、膵臓癌、肺癌、乳癌、大腸癌の計4種類の癌における未解明分野の研究を目的としたワーキンググループを設立した。ワーキングループは各種類の癌の専門家と癌患者アドボケートで構成され、最適かつ実現可能で、有意義な患者利益を提供し、生存期間とQOLの有意な改善という将来的な臨床試験の目標を特定した。

委員会とワーキンググループ幹部にとって優先的な課題分野であることに加え、提案はASCOの研究報告”Accelerating Progress Against Cancer: ASCO’s Blueprint for Transforming Clinical and Translational Cancer Research”(癌対策の加速的な進歩: 癌の臨床研究および橋渡し研究の構築に向けたASCOの計画)とも関連している。

提案の草稿は2013年4月に意見調査のため発表され、ASCOの2013年の年次総会で議論された。各グループの筆頭はEmile Voest医学博士(膵癌)、Roy Herbst医学博士(肺癌)、Lowell Schnipper医師(乳癌)、Alan Venook医師(大腸癌)であった。

翻訳担当者 渋谷 武道

監修 後藤 悌

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