臨床試験開始までの日数短縮への改革

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2013年6月17日

患者集積を必要とする癌の臨床試験の開始過程はしばしば年月がかかり、試験開始の遅れはきわめて有望な治療に対する試験の速度を大幅に遅らせる。患者登録が遅れた臨床試験は多くの場合、終了できないという調査結果が示されている。この事象の結果を知見の提出から試験の開始まで、くまなく再調査したことを受けて、NCI(米国国立癌研究所)の作業効率化部会(Operational Efficiency Working Group)は一連の勧告を以下に発表した。

  • ž臨床試験を開始するための理想もしくは目標日数は、臨床試験の第1相と第2相については、210日、第3相は300日とする。
  • ž 絶対最終期限として、この日数を超えた場合に臨床試験を中止にする日数は、臨床試験の第1相と第2相については、540日、第3相は720日とする。

OWEG勧告後の成果を調査した新たな研究が、NCIの臨床試験の専門家チームと共同研究グループの協力により行われ、その研究はNCIの臨床試験部門の臨時部長であるJeffrey Abrams医師が主導した。彼らの研究から、OEWG勧告により、臨床試験の第1相と第2相の開始までの日数が中央値で18.3%(541日から442日へ)短縮する結果となったことが示された。第3相での日数の短縮はさらに大きく、中央値で45.7%(727日から395日へ)短縮した。これらの中央値は未だOEWGが理想または目標とする期限には到達しなかったが、勧告に記された絶対最終期限は十分満たすことができた。絶対最終期限の突破に成功したことから、NCIは2012年4月5日以降の臨床試験のレビュー受付期限について、初期相の絶対最終期限を450日に、第3相を540日へと大幅に短縮した。このOWEG結果の研究は2013年6月17日のJournal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載されている。

原文

翻訳担当者 岩崎多歌子

監修 林 正樹 (血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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