ポナチニブのFDA承認

商標名:Iclusig

・慢性骨髄性白血病またはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病に対して承認(2012/12/14)
・安全宣言(2013/10/31)(2014年1月追記あり)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

安全宣言
2013年10月31日、米国食品医薬品局(FDA)の要請に応じて、製造元ARIAD Pharmaceuticals社は白血病薬ポナチニブ(Inlusig)の販売を自主的に中止することに同意しました。この要請はFDAが調査した結果によるもので、継続的な薬の安全性モニタリングによって、重篤な血管閉塞事象が増え続けていることが明らかになりました。この観察では、薬を服用し血栓や重度の血管狭窄などの血管閉塞事象を起こした患者の割合が、2012年12月の認可時点で報告された割合より著しく大きくなっており、ポナチニブの安全性プロファイルの重大な変更を示しました。

2013年12月20日、FDAは生命にかかわる血栓と重度の血管狭窄のリスクに対処するためのポナチニブの新たな安全対策を要請しました。この新しい安全対策が講じられたら、ARIAD Pharmaceuticals社は、条件に合う患者に向けて販売を再開することになりました。医療従事者は、患者ごとにポナチニブのリスクと利益を評価する場合、この追加の安全対策を検討して慎重に考慮するよう忠告を受けました。

要請された安全対策は、適応を制限するように表示を変え、血栓と重度の血管狭窄のリスクに関する追加の警告と使用上の注意を説明し、ポナチニブの用法・用量に関する推奨を改訂し、患者の投薬ガイドを更新することです。FDAはまたリスク評価と緩和策(REMS)も求めました。加えて、ARIAD Pharmaceutical社は市販後の調査を実施し薬の安全性と投与に関する特性をさらに明らかにしなければなりません。

ARIAD Pharmaceutoal社は2014年1月にポナチニブの販売を再開しました。

ポナチニブの新たな安全性対策は以下の通りです。

・適応は以下に限られます。
・T315I陽性慢性骨髄性白血病(慢性期、移行期、または急性期)あるいはT315I陽性フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)の成人患者の治療
・他のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)治療の適応にならない慢性期、移行期、もしくは急性期の慢性骨髄性白血病、またはPh+ALL成人患者の治療

・表示の警告および使用上の注意を改訂して、血管閉塞事象を記述します。これには、ポナチニブ治療患者の少なくとも27%(4人に1人以上)に生じたと認められる動脈および静脈の血栓ならびに閉塞の記述を含めます。

・用法・用量の推奨を改訂して、ポナチニブの最適投与量が明確となっていないことを記述します。推奨初期投与量は、食事の有無によらず1日1回、45mg経口投与のままとします。ただし、投与量の減量と中止に関する追加情報を含めます。

・患者の医薬品手引書を改訂して、改訂した薬品表示の安全情報と一致する追加の安全情報を含めます。

・ポナチニブのREMSは、この薬の承認された適応およびこの薬に関係する血管閉塞および血栓塞栓症の重大なリスクについて、処方者に情報提供します。REMSには以下のものを含みます。

 ・ポナチニブを処方しているか、処方していると思われる医療従事者へのREMSの書状
・専門学会のメンバーに配布されるREMSの書状
・医療従事者に向けたREMSデータシート
・いくつかの専門誌に公式表明を年4回、1年間、掲載
・学会時に目立つ位置に情報を掲示
・ポナチニブREMSウェブサイトの免責条項に、REMS期間中すべてのREMSの資料にアクセスできるようにすること

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大木勝弥 翻訳
金田澄子(薬学) 監修 
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慢性骨髄性白血病またはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病
2012年12月14日、米国食品医薬品局(FDA)は、チロシンキナーゼ阻害剤治療に抵抗性または不耐容を示す慢性期(CP)、移行期(AP)および急性転化期(BP)の慢性骨髄性白血病(CML)またはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)の成人患者を治療するポナチニブ(Iclusig錠剤、ARIAD Pharmaceuticals社製)に対して迅速承認を与えました。

この承認は、チロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容を示す疾患患者449名が参加した単一治療群による多国間多施設共同臨床試験であるPACE試験に基づいています。主要エンドポイントは、CP-CML患者が細胞遺伝学的大寛解(MCyR)、AP-CML、BP-CMLまたはPh+ALL患者が血液学的大寛解(MaHR)でした。FDAは、迅速承認の条件として、スポンサーが患者全員の24カ月の追跡データを提出する約束を果たすよう求めました。

有効性の結果により、CP-CML患者のMCyR率が54%であることが明らかになりました。BCR-ABLのT315I変異体保持のCP-CML患者の70%がMCyRを達成しました。MCyR維持期間の中央値については、本解析時点ではまだ到達していません。MaHR率はAP-CML患者が52%、BP-CML患者が31%、Ph+ ALL患者が41%でした。MaHR維持期間はAP-CML患者が9.5カ月、BP-CML患者が4.7カ月、Ph+ ALL患者が3.2カ月でした。

ポナチニブは、患者及び医療従事者に対し、本剤で治療した患者に血栓及び肝毒性が見られたことを注意喚起する「黒枠警告」を添付した上で承認されています。臨床試験で報告されている主な副作用に高血圧、皮疹、腹部痛、倦怠感、頭痛、皮膚の乾燥、便秘、発熱、関節痛および悪心があります。

ポナチニブで奨励される用量および処方計画は、食事と一緒または食事と一緒でなく経口投与で1日1回45 mgです。

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松長えみ 翻訳
林 正樹 (血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院) 監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

原文掲載日 

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