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バイオマーカー候補と肺癌治療薬をつなぐBATTLE試験/M.D.アンダーソンがんセンター

  • 2010年5月13日

生検に基づく試験により肺癌治療分野は個別化治療のより効率的な臨床試験へと向かう
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年4月15日

腫瘍生検の分子サインに基づいて患者への標的治療を決定する初めての肺癌臨床試験は、個別化治療および新薬のより効果的、効率的な臨床試験に向けての第一歩である、と試験主導者らは本日American Association for Cancer Researchの2010年第101回総会で報告した。
これまで1〜9回の治療を受けたIV期非小細胞肺癌患者255人の腫瘍に革新的な統計モデルを採用して、4つの薬剤と特定の分子サイン(バイオマーカー)を結び付ける試験の結果がテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らから発表された。

「分子経路を標的とする新薬は少数の肺癌患者に有効ですが、今のところ治療前にこれらの患者を同定する方法はありません」とM.D.アンダーソンの胸部および頭頸部内科腫瘍学部准教授でありBATTLE(Biomarker-integrated Approaches of Targeted Therapy for Lung Cancer Elimination)臨床試験の試験責任医師であるEdward Kim医師は述べた。

「BATTLE試験では、治療を決定し生存期間を延長する有効なバイオマーカーを用いて、乳癌や結腸癌を治療するように他のどのタイプの癌よりも死亡率が高い肺癌を治療できればという願いで、腫瘍バイオマーカーを評価しました」とKim氏は述べた。米国国立癌研究所は2009年に219,440例の新たな肺癌が診断され、そのうち159,390人が死亡したと推定している。

Kim氏は「また、BATTLE試験は登録者全員を対象とする大規模試験というよりも、標的治療を検証する少数の患者を対象としたより正確な臨床試験への方向性を示しています」と述べた。「効果が少なく、試験に十分な患者を登録できないことすらある大規模な第3相臨床試験は肺癌の研究にとって悩みの種なのです。」

「2つの肺癌腫瘍は顕微鏡下では全く同じに見え、病期も同じかもしれませんが、その作用は異なります」と、M.D.アンダーソン抗癌剤部門の代表で米国国防省の助成金対象BATTLE試験の試験責任医師であるWaun Ki Hong医師は述べた。「現時点で最も重要なことは、腫瘍の分子異常に基づいて治療を行うことなのです。」

BATTLE試験でバイオマーカー候補を同定

第2相臨床試験では4つの薬剤それぞれが他の3つの薬剤よりも良好に特定の分子サインを標的とするというエビデンスが得られた。試験に用いた薬剤はエルロチニブ(タルセバ)、ソラフェニブ(ネクサバール)、バンデタニブ(ザクティマ)およびエルロチニブとベキサロテン(ターグレチン)であった。各薬剤は特定の分子経路を標的とするようにデザインされており、これまでどの薬剤にもその使用につながる有効なバイオマーカーは見つかっていない。

BATTLE試験では、全生存率の優れた指標であることが最近の研究で明らかになった、8週間時点での疾患制御率が評価項目とされた。例えば、腫瘍にKRAS変異がありソラフェニブを投与された患者の疾患制御率は61%であったが、その他3剤の投与患者では32%であった。エルロチニブはEGFR変異に対して最も有効であり、バンデタニブはVEGFR-2の高発現に対して、エルロチニブとベキサロテンの併用はサイクリンD1の異常もしくはEGFR遺伝子の増幅に対して最も効果があった。これらの予備解析は今後の研究で注目される分野を示唆している。

全体的にみると、末期肺癌患者で30%前後という過去の実績と比較して、被験者の8週間時点での疾患制御率は46%であった。全生存期間中央値は9カ月であり、患者の38%が1年間生存した。4薬剤の毒性は非常に少なく、患者の6.5%のみに重度の副作用が認められた。

バイオマーカーの有効性に関する第2相試験の試験結果は、通常製薬会社の後援のもとでもしくは共同グループで実施される第3相試験で検証する必要があるとKim氏は警告した。

効率的な臨床試験のモデル

BATTLE試験は各患者から新たな腫瘍生検を首尾良く採取するという点とベイジアン アダプティブ・ランダム化統計モデルが採用されているという点で、臨床試験の1つの改善例を示している。

「BATTLE試験は個別化医療に向けての重要な一歩であり、生検に基づく仮説主導のバイオマーカー試験の実施可能性を実証することによって、臨床試験のパラダイムシフトとなります」と胸部および頭頸部内科腫瘍学部教授でありBATTLE臨床試験の共同試験責任医師であるRoy Herbst医学博士は述べた。

患者は試験で生検を新たに受けることに同意した、とKim氏は述べた。前回の生検以降、治療によって変化している可能性がある腫瘍の分子状態の生情報が提供されることから、これは試験デザインにとって極めて重要であった。

「BATTLE試験では臨床試験の進行中も統計モデルを修正することができるアダプティブ・ランダム化アプローチを採用しました」とM.D.アンダーソン生物統計学部教授のJ. Jack Lee博士は述べた。

最初の97人の患者はBATTLE試験の4つの治療群に一様にランダム割り付けされた。試験進行中にも、新たな患者への薬剤選択の指針とするために患者の生検および転帰に関する情報がモデルに取り入れられた。このため新たな患者は、以前の患者で同じ腫瘍バイオマーカーを有する患者に効果があった薬剤を投与される可能性が高くなった。

このモデルでは効果的な薬剤はより多く使用され、あまり効果が認められない薬剤の使用は最小限に抑えられるか中止されることになる。バンデタニブはVEGFRの過剰発現が認められる患者には効果が認められたものの、KRASに変異がある患者への使用は中止した、とLee氏は述べた。

バイオマーカーを同定し、それにより第2相試験で薬剤投与対象となる可能性のある患者集団を同定することによって、その後の第3相試験では必要となる症例数がより少なくなり、多くの患者を対象とする登録者全員の試験よりも試験の進行が早くなる、とLee氏は述べた。

BATTLE試験では今後、単剤療法に加えて併用療法についても検証し、一次治療を含め全病期の肺癌患者を対象としていく予定である、とKim氏は述べた。最終的には、個別予防臨床試験においてBATTLE試験アプローチを試みることが予定されている。

BATTLE試験プログラムは、2000年に開始した連邦政府資金によるプログラムの一部で、残念ながらお亡くなりになったM.D.アンダーソンの肺癌患者R. Duffy Wall氏に哀悼の意を表して設けられた。このプログラムは、米国陸軍の医学研究プログラムを通じて資金援助を受けており、Kay Bailey Hutchison上院議員、John Culberson下院議員およびその他多数の現職および元職国会議員の支援を受けた。

Kim氏、Herbst氏、Hong氏およびLee氏のM.D.アンダーソンの他の共著者は以下のとおりである。George R. Blumenschein Jr., M.D., Anne Tsao, M.D., Christine M. Alden, Ximing Tang, M.D., Ph.D., David J. Stewart, M.D., John V. Heymach, M.D., Ph.D., Hai T. Tran, PHARMD, and Scott Lippman, M.D., all of Thoracic/Head and Neck Oncology; Suyu Liu, Department of Biostatistics; Marshall E. Hicks, M.D., Jeremy Erasmus Jr., M.D., and Sanjay Gupta, M.D., of the Department of Diagnostic Radiology; Garth Powis, D.Phil, Department of Experimental Therapeutics; and Ignacio. Wistuba, M.D., Department of Pathology.

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豊 訳
小宮 武文(呼吸器内科)監修
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原文


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