[ 記事 ]

血液中の循環異常細胞が非小細胞肺癌の進行と共に増加/M.D.アンダーソンがんセンター

  • 2010年8月28日


M.D.アンダーソンがんセンター
2010年7月22日

新しい検出方法によって、非小細胞肺癌患者の血液中には腫瘍細胞と同一の遺伝子異常を有する異常細胞が存在すること、そしてこの血液中異常細胞の数は癌の進行とともに増加することが示された。この結果は、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らによりClinical Cancer Research誌に報告される。
また、本研究に参加した非小細胞肺癌患者らの血液中には、厳密に条件を適合させた健常人(対照群)の血液に比べ、何倍もの異常細胞が存在していた。

「私たちはさらに研究を続けることにより、これらの血液中に存在する異常細胞が、血液中を循環する非小細胞肺癌細胞であることを説明できる、と考えています」と、M.D.アンダーソンがんセンター病理学部教授であり責任著者であるRuth Katz医師は述べた。「このような血液中の循環腫瘍細胞を対象とした血液検査は、肺癌のより早い段階での診断、治療効果の判定および治療終了後の微小残存腫瘍の発見に利用できるかもしれません。」

Katz氏と共同研究者らは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)という技術を用いて非小細胞肺癌にみられる染色体異常を有する血液中異常細胞を検出する研究を(彼らによると)初めて行った。FISH法では、染色体の色素標識DNAプローブを用いて細胞の標的遺伝子異常部を発色させ、これを蛍光顕微鏡で観察することにより、異常細胞を検出し定量することができる。

「FISH法では従来の方法よりも、肺癌患者の血液中に大量の異常細胞が検出されたため驚きました」とKatz氏は述べた。

研究者らはこれまでの研究で示された肺癌に密接に関連した遺伝子異常を標的とした12個のバイオマーカープローブを用い、喫煙者と非喫煙者を含む、非小細胞肺癌患者59人と肺癌ではない24人の対照群を比較した。その結果、

・ 患者群と対照群では血液中の循環異常細胞数の平均値に顕著な有意差が見られた。たとえば3番染色体に存在する3p22.1と呼ばれる遺伝子の欠損を有する異常細胞は、対照群の血液中に平均では7.04個/µL認められたが患者群では平均で45.52個/µLであった。
・ 異常細胞は病期に有意に関連し、初期から進行期に進むに従って何らかの遺伝子異常を持つ細胞が増加した。
・ 血中異常細胞と腫瘍細胞との間には8個のバイオマーカーで強い相関が認められた。血液中異常細胞の上皮細胞成長因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅染色体増加は腫瘍細胞における遺伝子増幅と有意に関連し、III期またはIV期で最も顕著な相関がみられた。

いくつかのバイオマーカーは肺癌の再発率と全生存率に関連していたが、年齢、性別、および病期で補正するといずれも統計学的に有意な予後因子とはならなかった。これらの関連について言及するにはさらに大規模な臨床試験が必要であるとKatz氏は述べた。

研究チームによるFISH分析では、上皮由来の循環腫瘍細胞の細胞表面に結合する抗体に免疫磁性ビーズを結合させる既存の方法よりも、桁違いに多くの血中異常細胞が検出された。上皮組織は臓器の表面や体腔を覆う組織であり、あらゆる固型癌の80%は上皮細胞由来である。従って、従来法による血液中循環腫瘍細胞の検出は、上皮由来の腫瘍に限られる。

FISH法では血液中に45000個/mL以上の異常細胞が検出されたが、抗体を用いた上皮細胞検出法で検出される細胞数は通常10個/mL未満である。

Katz氏はこの差はFISH法が上皮細胞だけでなく、原発巣から他臓器への転移に関与するとみられる間葉細胞や、幹細胞前駆細胞やその他の上皮細胞以外の種々の細胞を検出しているためと考えている。

「これこそが本研究が他の研究と異なる点です。われわれは研究でDNAプローブを用いたFISH法により、腫瘍細胞の起源に関係なく、細胞核内の染色体変化を観察しました」とKatz氏は述べた。

Katz氏は血液中循環異常細胞と病期、再発および生存率との相関を検証するため、より患者数を増やした試験を計画していると述べた。また、研究者らは上皮細胞、間葉細胞、幹細胞および血液や白血球マーカーをFISH法と組み合わせることにより、血液中異常細胞の起源と関連形質を追跡する予定である。

FISH法の臨床試験への適用に向けて研究は進行中である。

本研究はNCIの癌予防フェローシップ、NCI補助M.D.アンダーソン肺癌革新的医療推進研究プログラム、アストラゼネカから援助を受けた。

Katz氏の他の共著者は以下のとおりである。Study co-authors from MD Anderson are Weigong He, Abha Khanna, Ricardo Fernandez, Tanweer M. Zaidi, Nancy Caraway, M.D., and Hua-Zhong Zhang of the Department of Pathology; Margaret Spitz, M.D., Carol Etzel, Ph.D., and Randa El-Zein, M.D., Ph.D. of the Department of Epidemiology; Stephen Swisher, M.D., Reza J. Mehran, M.D., and Jack Roth, M.D., of the Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery; Carlos Jimenez, M.D., of the Department of Pulmonary Medicine; and Jeffrey Morris, Ph.D., of the department of Biostatistics. David Blowers, Ph.D., of AstraZeneca in Cheshire, UK; Matthew Krebs of Paterson Institute for Cancer Research in Manchester, UK, and Feng Jiang, M.D., Ph.D., of the University of Maryland School of Medicine.

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武内優子訳
田中文啓(呼吸器外科)監修
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原文


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