GISTに対するグリベックの治療中断は推奨されない

キャンサーコンサルタンツ
2007年3月

病勢が安定している消化管間質腫瘍(GIST)の患者に対するグリベック(メシル酸イマチニブ)の治療中断は推奨されないとフランスの研究者らは報告している。この試験の詳細は2007年3月20日のJournal of Clinical Oncology誌に掲載されている。

GISTは消化管壁に発生する稀なタイプの癌である。アメリカ癌協会の推定によると、米国で年間5000人がGISTであると診断される。GISTは消化器系を通じて食物や栄養の移動を担う「ペースメーカー」細胞に発生すると考えられている。

GISTに対する標準治療は、可能な限り多くの癌を外科切除することと分子標的薬であるグリベックによる治療外科切除がある。GISTは標準的な化学療法や放射線療法が実質的に奏効しないので、有効な治療選択は限られている。GISTはグリベックによる治療中は安定していることが多く、患者が一時的にグリベックを中断した場合、病勢の安定が維持されるかどうか研究者らは疑問視している。 

GISTが安定した患者に対するグリベックによる治療が断続的に中止できるかどうかの疑問に取り組むため、研究者らは臨床試験を実施して治療を継続した患者と中断した患者の結果を比較した。この臨床試験は癌がグリベックによる治療で1年以上安定している58例の患者を対象とした。一方の群はグリベックによる治療を継続し、もう一方の群は治療を中断した。

・観察期間の最後に、治療を中断した群では32例中26例で増悪が認められたのに対し、継続した群では26例のうちわずか8例で 癌の増悪がみとめられた。
・両群間において全生存率および生活の質に差は全くなかった。
・癌が進行した中断群の26例中24例は、その後グリベックによる治療が奏効した。

グリベックによる治療で1年以上安定していたGIST患者では、重篤な副作用が生じる場合を除き、治療を中断することは推奨されないと研究者らは結論を出した。著者は「進行性のGIST患者の多くで、イマチニブを中断すると進行が早くなる。通常診療では、著しい毒性が患者に生じない場合、中断を推奨できない」と、特に言及している。

参考文献

Blay J-Y, Le Cesne A, Ray-Coquard I, et al. Prospective multicentric randomized Phase III study of imatinib in patients with advanced gastrointestinal stromal tumors comparing interruption versus continuation of treatment beyond 1 Year: The French Sarcoma Group. Journal of Clinical Oncology. 2007; 25: 1107-1113.

コメント

慢性骨髄性白血病の治療に対して推奨することと同様に、これらのデータはGISTに対するグリベックを継続する考えを支持している。


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翻訳担当者 吉村 祐実 

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

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